顔面神経麻痺で食事ができない|噛めない時の対処法

顔面神経麻痺で食事ができない|噛めない時の対処法とは?わかりやすく解説します。

はじめに:顔面神経麻痺で「食事ができない・噛めない」と悩むあなたへ

顔面神経麻痺を発症すると、「食事ができない」「うまく噛めない」「飲み込みにくい」といった症状に悩まされ、人前での食事に不安やストレスを抱く方が多くいます。今回は、安全な食事の工夫と、後遺症を防ぐための正しい対処法を分かりやすく解説します。

なぜ食事がこぼれるのか?噛めない・飲み込みにくいと感じる医学的な理由

口唇閉鎖不全による水分の流涎と取り込みにくさ

顔面神経麻痺の急性期には、麻痺側の唇が閉じられなくなる口唇閉鎖不全が生じるため、コップでの水分摂取時に口角から水がこぼれたり、流涎(よだれ)が起きやすくなります。また開口運動に左右差が出るため、食物を口に入れる際にも取り込みにくさを感じ、人前での食事に大きな不安を抱く原因となります。

頬の筋力低下に起因する咀嚼障害と口腔内の食物残留

頬の筋力が低下するため、咀嚼時に食塊を歯列上にのせて保つことが難しくなり「うまく噛めない」という状態に陥ります。さらに、嚥下後(飲み込み後)にも患側の口腔内(頬の内側など)に食物が残渣として残留しやすくなり、食事が食べにくいといった心理的ストレスや生活の質(QOL)の低下に直結します。

もっと詳しく:弛緩性麻痺における口唇閉鎖不全と咀嚼・嚥下障害の病態生理

顔面神経麻痺の急性期における弛緩性麻痺は、口輪筋の麻痺による口唇閉鎖不全を引き起こし、水分の流涎や食物の取り込みにくさを生じさせます。また、頬筋の筋力低下は咀嚼時の食塊保持を困難にし、咀嚼障害を誘発します。嚥下後も患側の口腔内に食物残渣が残留しやすくなります。これらの食事困難は、顔面神経麻痺特異的QOL尺度(FaCE Scale)の「食事が食べにくい」「飲食物が口からこぼれる」「人前での食事を避ける」という評価基準に直結しており、適切な食事指導が必要です。

毎日の食事を安全で快適にするための具体的な対処法と食べ方の工夫

手指による口角サポートと舌を活用した残渣のかき出し

飲食時は手(手指)で患側の口角や口唇を軽く押さえて、ここぼれないように補助しながら食事をすることが推奨されます。また、口腔内に食物が留まってしまった場合は、無理に飲み込もうとせず、舌を使って残渣をかき出すようにします。この動作は口周囲筋のストレッチやリハビリにもなります。

交互嚥下による残留防止と患側で噛むことの重要性

固形物が残留しやすいため、水分と固形物を交互に飲み込む「交互嚥下」や、食後のうがいが効果的です。また、麻痺側で噛むのを避けていると三叉神経支配の「咬筋(噛む筋肉)」が萎縮してしまうため、手指でサポートしながら患側も意識して使って噛むことが大切です。

もっと詳しく:口周囲筋のストレッチを兼ねた舌運動と咬筋萎縮を予防する咀嚼指導

食事困難への対処として、手指で患側の口唇閉鎖を補助し、流涎や食物のこぼれを防ぎます。口腔内の食物残渣には舌を活用してかき出させますが、この動作は口周囲筋のストレッチ効果もあります。固形物残留には水分と固形物を交互に嚥下する「交互嚥下」と食後のうがいを徹底させます。さらに、患側での咀嚼回避は三叉神経支配である咬筋の廃用性萎縮を招くため、手指で口角を支持しながら患側での咀嚼を促し、機能維持を図ることが重要です。

将来の後遺症を悪化させないために絶対に避けるべき食事中のNG行動

ストローや麺類の強い吸引が招く神経の迷入再生リスク

口唇をすぼめて口腔内を陰圧にする必要があるストローでの飲み方や、麺類をすする動作には注意が必要です。これらの摂取時に力んで強い吸引を繰り返すことは、再生中の顔面神経が誤った筋肉に繋がる「迷入再生」を強く促すため、生活指導において絶対に避けるよう警告されています。

誤った力みが引き起こす「口から目」への病的共同運動

力んだ吸引を繰り返すと、将来的に「口を動かすと目が閉じてしまう」といった病的共同運動の出現や増悪の大きな誘因となります。吸いにくいからと無理に力を入れる行動が、将来的な顔の引きつれを招くため、食事の際は決して力まず、安全な摂取方法を意識することが極めて重要です。

もっと詳しく:口腔内陰圧化を伴う強い吸引運動が病的共同運動の出現に及ぼす影響

ストローの使用や麺類をすする動作は口腔内を陰圧にするため、口周囲筋への強い力みを必要とします。この際に強い吸引運動を反復すると、顔面神経の再生過程において「迷入再生」が促進されます。軸索が本来とは異なる筋肉を過誤支配することにより、将来的に口運動時に意図せず患側の閉瞼を招く「口から目」への病的共同運動を出現・増悪させる大きな誘因となります。そのため、回復期の患者に対しては力んだ吸引を絶対に避けるよう指導する必要があります。

回復期・慢性期の食事中に現れる特有の症状と適切な対策

食事のたびに不意に涙が流れる「ワニの涙現象」のメカニズム

麻痺の回復に伴い、口唇からの漏れや咀嚼のしにくさは徐々に改善します。しかし回復期以降には、食べ物を食べる際(唾液腺が刺激される時)に、再生した神経が誤って涙腺を刺激してしまい、多量の涙が流れる「ワニの涙」と呼ばれる特有の後遺症(病的共同運動の一種)が出現することがあります。

意図せず目が閉じてしまう時の対策と開瞼を意識した食事

回復期以降は、食事中(口を動かして噛む時)に意図せず患側の目が閉じてしまう病的共同運動が出現しやすくなります。この症状への対策としては、食事中はできるだけ目を大きく開けて、開瞼(かいけん)を意識して食べるようにすると良いでしょう。人前での食事のストレスを軽減できます。

もっと詳しく:唾液腺・涙腺の神経過誤支配によるワニの涙現象と開瞼意識の臨床的意義

回復期以降の慢性期病態では、神経再生時の過誤支配による特有の症状が顕在化します。食物摂取に伴う唾液腺への分泌刺激が、迷入再生した神経線維を通じて誤って涙腺へ伝達され多量の流涙をきたす病態が「ワニの涙現象」です。また、咀嚼運動に伴って患側の目が閉じてしまう病的共同運動も出現します。これに対する臨床的アプローチとして、食事の際には意識的に目を大きく開ける「開瞼の意識」を持たせることが推奨され、不随意な閉瞼を抑制しQOL向上に寄与します。

焦らず工夫を取り入れて、毎日の食事ストレスを減らそう

顔面神経麻痺による食事困難には、手指での閉鎖補助や交互嚥下、食事中の開瞼意識などの工夫が非常に効果的です。ストローや麺類での強い吸引は病的共同運動を悪化させるため絶対に避け、焦らず日々の食事を安全に楽しみましょう。

参考文献

  • 1位:『これからはじめよう! 顔面神経麻痺リハビリテーション』 (編:飴矢美里・羽藤直人 / 出版社:インテルナ出版)
    ※急性期の咀嚼・嚥下困難のメカニズム、麺類やストローの困難さ、および回復期におけるワニの涙や病的共同運動の出現に関する根拠として最も多く参照。
  • 2位:『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』 (編:日本顔面神経学会 / 出版社:金原出版)
    水分摂取時の指による口唇閉鎖の補助、交互嚥下の有効性、およびストロー・麺類での強い吸引が病的共同運動の増悪誘因となるという警告の根拠として参照。
  • 3位:『動画DVD付 顔面神経麻痺のリハビリテーション 第2版』 (著:栢森良二 / 出版社:医歯薬出版)
    患側口角の指でのサポート、舌を使った残渣のかき出し、患側を使わないことによる咬筋萎縮のリスク、およびワニの涙現象のメカニズムの根拠として参照。
  • 4位:『顔面神経麻痺を治す (Monthly Book ENTONI No.282)』 (出版社:全日本病院出版会)
    QOL評価(FaCE scale)における「人前での食事の回避」や「食事がこぼれる」ことによる心理的負担の医学的根拠として参照。

顔面神経麻痺の鍼灸外来

一般的な鍼灸院では行わない「耳の検査」で、回復の兆しを探ります。

アブミ骨筋反射を測定する様子

「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」「後遺症が心配」
私たちはそうした不安を抱える患者さんと日々向き合っています。

当院が他の鍼灸院と決定的に違うのは、「アブミ骨筋反射」を確認すること。
顔面神経は、実は耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にも繋がっています。音が鳴った時にこの筋肉が反応するかを見ることで、神経が反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。

この検査には医療機関レベルの専門機器が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。
当院では、見た目や感覚だけに頼らず、こうした「客観的なデータ」をもとに治療方針を立てます。「もう治らない」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。

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当院について

当院院長 院長 吉池 弘明

森上鍼灸整骨院
院長 吉池 弘明

森上鍼灸治療では、西洋医学の代替医療として鍼灸治療に取り組んでいます。
顔面神経麻痺や突発性難聴の患者様には、臨床経験20年以上の鍼灸師がチームを組んで治療にあたります。

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